萌え体験談

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アニメキャラ

家では無防備な妹

 俺は、小5ぐらいから性欲が強くなった。

 2つ下に妹がいたが、当時、小3の妹は、性欲の対象にならなかった。
 
 妹も小6ぐらいになると、胸も膨らみ始め、スポブラをつけるようになった。

 しかし、ランドセルを背負って、アニメキャラのパンツを履いてる妹は、流石に性欲の対象にはならなかった。

 そんな妹も中学生になると、雰囲気が大人っぽくなった。

 ランドセルから、中学の制服に変わったことも、大きなポイントだった

 
 父親と母親は、職場結婚らしく、同じ会社で働いていた。

 サービス業で、土日祝日は朝から夜まで仕事。

 週休2日で、平日に2日の休みがあった。

 つまり父親2日、母親2日、合計4日の休みが平日にある。

 平日のうち2日は父親か母親のどちらか休みで、1日は父親と母親の両方が休みだった。

 2人同時に休める日を週1で作れるように、シフトを調整してたらしい。

 土日祝日と、平日の2日、合計で週の4日は親が夜まで仕事だった。

 
 妹は、ずぼらな性格だったが、父親と母親が口うるさかったから、親の前では、一応、整理整頓してた。

 親がいない日は、妹と一緒にお風呂に入ってた。

 と言っても、別に、一緒にお風呂にはいろうとか、約束した訳じゃない。

 俺が風呂掃除をして、お湯を入れる。

 風呂の準備ができたら、俺が妹に声をかける。

 妹が脱衣所に行ったら、俺も後から脱衣所に行く。

 妹のトリセツは、とにかく小言を言わないことだ。

 親に小言を言われて、機嫌が悪くなっている妹を見てたから、俺は妹に何も言わないようにしてた。

 親がいない日にだけ、妹と一緒にお風呂に入ってた。

 妹が親に話すこともなかった。

 妹が小学校の頃は、一緒にお風呂に入っても、さほど興奮とかしなかった。

 しかし、妹が中学校に入学してからは違った。

 それまでランドセルを背負ってた妹が、中学校の女子と同じ制服、体操服を着てるわけだ。
 
 服装が変わると、ドキドキした。

 
 俺が中3,妹が中1の時のこと。

 日曜日で、親はいなかった。

 いつものように風呂掃除をして、お湯を入れた。

 妹にお風呂の準備ができたことを伝えてから、妹が脱衣所に行くのをリビングで待っていた。

 妹の後を追って、脱衣所に入った。

 妹が脱いだ服を受け取って、洗濯ネットに入れた。

 妹が脱いだパンツを受けとって、洗濯ネットに入れた時は、ドキッとした。

 
 妹が浴室に入ったのを確認してから、妹が履いていたパンツの匂いを嗅いでみたが、汗臭かった。

 風呂に入りながら聞いた話では、体育があったらしい。

 
 妹は、陸上部に入った。

 といっても、おしゃべり専門で、大会に出られるレベルではなかった。

 身長もやや低く、腕もお尻も、肉がついて、ぷにゅってしてた。

 陸上選手のような筋肉質では、なかった。

 
 俺は帰宅部だったので、妹よりも先に家に帰ってた。

 家に帰るとすぐに風呂掃除をして、妹が帰ってくるのを待った。

 妹が手洗い、うがいをしている間に、素早く風呂のお湯を入れた。

 といっても、ボタンを押すだけだったが。

 親がいない日、妹は部活から帰ってくると、制服を脱ぎ、ブラも外して、パンイチになってた。

 部活があると、汗でぐっしょりだったそうだ。

 妹が制服を脱ぐのを、リビングの特等席で眺めてた。

 
 成長した妹に触りたい願望もあったが、ヘタレだった俺は、見てるだけだった。

 ちなみに、生理の時は、当然、一緒にお風呂はNG。

 妹から、ダメの合図をされた。

 家は一戸建て住宅。

 父親と母親は1階。 

 俺と妹は2階。

 朝、妹がパジャマから制服に着替える時は、妹の部屋に入って、妹が着替えるのを堂々と見てた。

 俺が部屋に入っても、妹は何も言わなかった。
 
 

レイヤーの妹とセックス

妹は小学校高学年の頃からオタク文化にハマり、兄の私を巻き込んで色々なところへ行った。母はそんな妹に理解を示していたが、父は度々妹を叱責してなんとかオタク文化から足を洗わせようとしていた。定期的に部屋を強制的に掃除してオタク文化の気配があるものを片っ端から処分されたりしていて、中学卒業直前に父が単身赴任となり家から居なくなるまではとても暮らし辛かったと思う。高校入学後、すぐにオタク活動の費用捻出のためにアルバイトを始めた。その店がちょうど私のアパートのすぐ近くだったのでよくアルバイト帰りに寄って一緒にご飯へ行っていた。

そんな妹が大学進学が決まり、始めはひとり暮らしをすると言っていたが、費用が嵩むから実家から通え、と両親から強く説得されていたが、結局既に就職している私と同居することで決着がついて妹の大学に近くである程度広いマンションへ引っ越した。
始めのうちの何日かは引っ越し荷物の片付けで忙しく特に何もなかったが、妹の荷物を片付け終わると同時に今まで抑圧されてきた妹が解放されて家にいる間はコスプレをして暮らすようになった。大体は持っている服を加工していたが唯一、コスプレのためだけに持っている服は目のやり場に困るものだった。妹は巨乳で中1の時に既にEカップあり、大学入学時点ではGカップあった。そんな巨乳の妹が何かのアニメキャラの物で殆ど布がない物を着ていたので流石に我慢できなくなりその日の夜に妹を抱いた。妹は戸惑うことなく私の欲望を全て受け止めてくれて、処女をもらうことができた。私は何人かの女子と交際して交わっていたが大体は膣が小さく私のペニスを受け入れることはできなかったが、妹の膣はキツイが根元まで飲み込んでくれた。兄妹は相性が良いのだろうか。破瓜の瞬間、妹は目に涙を浮かべながら喜んでいた。後で聞くと、私が大学入学して実家から出て行ってからずっと私に抱かれることを想像していたというのだ。妹の思惑通りになった、という喜びから涙が出てきたそうだ。

その日からほぼ毎日のように妹を求め、すぐにアナルも戴いて危険日はアナルで交わり安全日は膣で交わった。コスプレ以外の服装でもやる事があるが、2人揃って燃えるのはコスプレしている時だった。

妹が大学卒業し、就職してからも生活は変わらず毎日のようにとはいかなくなったが、毎週セックスを続けている。もちろんコスプレセックスだ。

お隣の元ヤンの若妻は、意外に経験が少なかった

 僕は大学3年生で、一人暮らしを始めて3年経つ。実家がそれほど裕福ではないので、住んでいるアパートもけっこうボロい。
 でも、それはそれで良いこともあって、隣の部屋の夫婦の夜の運動会の声がよく聞こえてくる。隣に住んでいるのは、若い夫婦だ。1年くらい前から入居している。
 旦那さんは職人さんで、朝早くからハイエースでどこかに行く。奥さんは、ちょっとギャルっぽい感じの若い女性で、元ヤンなのかな? という感じだ。でも、驚くほど可愛い。人の趣味に口を出す気もないが、ギャルっぽい格好ではなく今どきの格好をしたら、本当にアイドル並みに可愛い女性になるのになと思う。
 

 僕は、どちらかというと内向的で、一日中部屋にこもってゲームをしていても楽しいと思うタイプだ。お隣さんとは、正反対のタイプだと思っている。でも、不思議とお隣の奥さんには気に入られていて、顔を合わせると挨拶だけではなくけっこう話し込む。
 最初は僕もビビっていたが、いまでは顔を合わせるのが楽しみだと思うようになっていた。楽しみなのは、話をすることもそうだけど、真奈美さんの格好のことが大きい。
 真奈美さんは、いつもショートパンツを穿いていて、ルーズな上着を着ていることが多い。ドンキホーテによく居そうな感じの格好だ。
 背が低くて胸元がルーズなシャツやスエットなので、胸の谷間がよく見える。真奈美さんは、けっこう胸が大きい。普通に話していても、身長差で胸の谷間が見えてしまう。
 でも、胸の谷間よりも太ももを見るのが楽しみだ。別に太っているわけでもないのに、妙にムチムチしている。もしかしたら、何かスポーツとか部活をしていたのかな? と思うような太ももだ。

「おはよー。あれ? 遅いね。学校は?」
 真奈美さんが、笑顔で話しかけてきた。僕は、挨拶を返しながら、真奈美さんの髪の色をみて少し驚いていた。ピンク色っぽい髪色になっている。
 もちろん、アニメキャラみたいなはっきりしたピンク色ではなく、光の加減によっては薄い紫とかグレーっぽく見えるような、オシャレ系のピンクだ。
 でも、めちゃくちゃ似合っていて、もの凄く可愛らしい。髪のことを褒めた。自分でも、けっこうテンション高く褒めたと思う。つい興奮してしまった……。

「ホント? 嬉しいな。ちょっと不安だったんだよねー。少しはヤンキー臭さ消えた?」
 真奈美さんは、はにかんだように言う。でも、髪と顔は可愛らしいが、服装は元ヤン臭が強い。僕は、そうですねと言いながらも、ちょっと表情がこわばっていた。
「あっ! いま、全然消えていないって思ったでしょー」
 真奈美さんは、頬を膨らませながら言った。リアルでこんな風に頬を膨らませる人を初めて見たが、すごく可愛いと思った……。髪の色も相まって、アニメキャラかと思ってしまった。

 僕がしどろもどろで良いわけをすると、
「フフ、でも、ありがとね。旦那、色が変わったことすら気がつかなかったからさ。たか君は優しいね。彼女がいないのが不思議だよ」
 真奈美さんは、最後はからかうような口調だった。僕は、そのうち出来ますよと言って大学に向かった。朝から、良いものが見られた。僕は、上機嫌だった。

 大学では、いつもの仲間といつもと同じように過ごした。代わり映えしない毎日だが、それなりに楽しい。でも、なかなか彼女が出来ない。大学でもバイト先でも、それなりに仲良くしている子はいる。
 でも、どうしても真奈美さんと比べてしまってテンションが落ちる。本当に、なかなか居ないくらいに真奈美さんは可愛い。あんな可愛い人が近くに居ると、不幸な面もあるなと感じた……。

 最近は、コロナの影響もあってあまり寄り道をせずに帰ることが多い。以前は、マックやスタバでよく駄弁っていた。でも、なんとなくそんな感じではなくなってしまっていて、寂しいなと思う……。

「あっ、ちょうど良かった! ねぇ、ネット調子悪いの。見てくれる?」
 廊下でばったりと真奈美さんと遭遇した。真奈美さんは、戸惑っている僕の腕を掴むと、強引に部屋に引きずり込んだ。部屋の中に入るのは初めてだ。僕の部屋とは間取りが違い、2DKだ。1Kと2DKが混在しているなんて珍しいなと思いながら、部屋を観察した。
 妙に可愛らしい部屋だ。ぬいぐるみも多いし、やたらとピンク色の物がある。旦那さんは職人さんで元ヤンバリバリのタイプなのに、こんな部屋に住んでいると思うと少し面白いと思った。

「わかる? テレビにyoutubeが映らなくなったの」
 真奈美さんは、不安そうな顔をしている。でも、そんな顔まで可愛い。そして、今日はすごくラフな格好をしている。タンクトップみたいな上着。なんか、ブラと一体になっているようなヤツだ。
 胸の谷間がエグい。そして、ホットパンツだ。いつものショートパンツよりも、さらに短い。太ももがほとんど根元まで見えてしまっていて、ドキドキした。
 あまり見ないように気をつけながら、テレビを確認した。設定から確認すると、ルーターに接続されていない。ルーターを見ると、コンセントが抜けかかっていた。それを指摘すると、
「ホントだ! へへ、なんか恥ずかしいな」
 と、真奈美さんは頬を赤くしながら言う。コンセントを挿し直すと、あっさりと接続が完了した。
「良かった、ありがとう。ホント、助かったよ。私、弱いんだよね、ネットとか。そうだ、ケーキあるんだ。お礼に食べて。紅茶で良い?」
 そんな風に言うと、彼女はキッチンに立った。お茶とケーキの準備を始める彼女……とても元ヤンには見えないような、女の子っぽい行動だ。
 僕は、後ろ姿を見てさらに興奮してしまった。ホットパンツが短くて、お尻の肉が見えているような感じになっている。下品と言えば下品な姿だが、もの凄く可愛い真奈美さんのお尻の肉がはみ出ていると思うと、一気に勃起してしまった……。

 そして、ケーキを食べながら話をした。真奈美さんは、僕に彼女が出来ないことを不思議に思っているようだ。
「だって、たか君イケメンじゃん。ネットも強いし」
 真奈美さんは、いつもそんな風に褒めてくれる。でも、自分でイケメンとは思っていない。確かに、少し濃い顔をしているので、角度によってはイケメンっぽい感じになることもある。でも、女の子にモテたとか言う経験はない。

「そうかなー? 私はイケメンだと思うけど。少なくても、私の好みの顔だよ」
 真っ直ぐに僕を見ながら言う彼女。ドキドキしすぎてケーキの味もわからなくなってきた。そんな事ないですと否定すると、
「そんなことあるよ。たか君は格好いいよ。紅茶、もっと飲む?」
 と言ってくれた。浮かれた気持ちでお願いしますと言って、紅茶を注いでもらった。

 今度は、僕が色々質問をした。旦那さんとはどこで出会ったのかなどを。
「え? ナンパだよ。居酒屋で飲んでた時に」
 真奈美さんは、そんなことを言い始めた。なるほどなと思うような馴れ初めだ。赤ちゃんは作らないんですかと聞くと、
「いま、作ってる最中だよ。でも、なかなか出来ないんだ。もしかしたら、どっちかに問題があるかも」
 真奈美さんは、少し寂しそうに言う。デリケートなことを聞いてしまったなと反省して謝った。
「謝らなくても良いよ。まだ決まったわけじゃないし。旦那、あんまりセックス好きじゃないんだよね。男なのに、性欲弱いのかな?」
 そんな事まで言い始めた。僕は、ドキドキしながら話を聞き続ける。思いきって、真奈美さんはセックスが好きなんですかと聞いた。
「え? そりゃね、好きに決まってるでしょ。元ヤンなんだから」
 笑いながら答える彼女。自分で質問しておきながら、僕は恥ずかしくて顔を赤くしてしまった。

「そう言えば、たか君は経験はあるの?」
 真奈美さんは、ニヤニヤしながら聞いてくる。僕は、正直にないと答えた。
「そうなの!? どうして? あっ、もしかして、男の人が良いとか?」
 真奈美さんは、意外に天然キャラだ。最初は元ヤンキャラで怖い人と思っていたが、全然そんな事はなかった。

「きっと、それが悪いんじゃない? 経験してないから、女の子に対して臆病になってるんだよ。風俗でもなんでも良いから、経験しちゃいなよ」
 真奈美さんは、そんなことを言う。僕は、旦那さんが風俗に行ってもOKなんですかと聞いた。
「え? ダメだよ。決まってるじゃん」
 それならどうして風俗を勧めるのかと聞いた。
「それは……まだ彼女がいないんでしょ? だったら、良いんじゃない?」
 真奈美さんは、しどろもどろっぽくなっている。僕は、風俗は抵抗があると告げた。
「だったら、ナンパしちゃえば? たか君のルックスなら、きっと上手く行くって」
 そんなことを言ってくれる真奈美さん。頑張ってみますと告げた。

 この日から、真奈美さんは会うたびに経験できたのかと聞いてくるようになった。まるで、親戚のウザいおじさんみたいだ。でも、本当に心配してくれているような感じだ。
 僕は、一度ナンパを試してみようかな? と思った。そして、友達と一緒に実行した。でも、コロナの影響もあるのか、話すらまともに聞いてもらえなかった……。

「そっか……そうだよね。今は時期が悪いもんね。私の昔の仲間、紹介しようか?」
 真奈美さんは、ナンパのことを言い出したことに責任を感じているのか、そんな提案をしてきた。僕は、是非お願いしますと言った。

 すると、真奈美さんが昔の写真を見せてきた。
「この子とかは?」
 写真を指さす彼女……金髪で、特攻服みたいなものを着た女の子が映っていた。いまは、この人はどんな感じなんですか? と聞くと、
「うーん、見た目はあまり変わらないかな?」
 と、苦笑いしながら言う。僕は、その写真の端っこに映っていた真奈美さんを見て、同じようなドヤンキーな格好をしてても本当に可愛いなと思った。

 そして、ダメ元で、この子が良いですと言って真奈美さんの昔の姿を指さした。
「えっ? こ、これは私だよ」
 真奈美さんは、一瞬で耳まで真っ赤になった。真奈美さんは、今日もルーズだけどエロい格好をしている。ショートパンツなので、あぐらをかいている真奈美さんのショーツまでチラチラ見える。
 胸も相変わらず豪快に胸チラしているし、ヘソもチラチラ見えそうなタンクトップだ。こんな格好をしているのに、恥ずかしがって耳を赤くしている真奈美さんがたまらなく可愛く見えた。

 僕は、引っ込みが付かなくなって、ダメですか? と聞いた。怒られる……と思いながらビビり倒していたが、
「私なんかで良いの? 本当に?」

ロシアの天使が空から落ちてきた

僕は、23歳の大学生で、休学していたのでまだ2年生です。
昔から、英語が好きで、休学していたのもアメリカを放浪していたからです。

そのおかげもあって、映画はしゃべるのも含めて、問題ないレベルです。
とは言っても、英語が出来るくらいで就職が有利になる時代でもないので、すでに就職に関しては色々と調べて動いていました。

僕は、自分ではそこそこ整った顔だと思っていますが、いわゆる草食系なので、彼女もこの歳まで作ることが出来ませんでした。とは言っても、それほど強く欲しいと思っているわけではないので、毎日趣味などで楽しく過ごしていました。
趣味と言っても、アニメを見たり、フィギュアスケートを見たりするくらいですが、それで毎日充分楽しいです。

そんなある日、秋葉に買い物に行って、ちょっと外れの方にあるショップに向かう途中、いきなり英語で声をかけられました。
『あなたは、英語しゃべれるのかしら? 本当に、誰もしゃべれないって、信じられない!』
と、かなりイライラした感じで言われました。
振り返ると、ちょっと大きめのコロ付きのバッグを持った、小柄な金髪の白人さんがいました。
どう見てもまだ子供なんですが、恐ろしいほどの美しさで、射抜くような青い目で僕をじっと見つめていました。

僕は、気圧されるように、
「しゃべれます。なんでしょうか?」
と、気弱に言ってしまいました。

僕をじっと見ていた美少女は、
『ハニュー、、、』
と、ボソッと言いました。
「あ、違います。別人です。似てると言われますが、違います」
と、しどろもどろで答えました。

僕は、フィギュアスケートの羽生選手と似ていると言われることがあります。
彼が話題になるようになってからは、にわかに僕もモテ期が来たのかな?と、思うくらい、女子に話しかけられるようになりました。
でも、顔はちょっと似てるけど、羽生選手とはスペックが違いすぎます。僕は弱気ですし、スポーツもダメ、勉強も英語以外はごくごく普通、、 本当に、同じ人類とは思えないくらい、彼とは差があると思います。

『わかってる、、 ねぇ、ここにはどう行けばいいの?』
英語が通じるのがわかって、イライラも収まったのか、普通の口調でした。
でも、ニコリともせずに、淡々と言う彼女は、氷のように冷たい印象でした。
それにしても、驚くほどの美少女です、、、

そこで僕は気がつきました。
この子は、リプニ○カヤさんだと、、、
フィギュアスケートを見るのが好きな僕ですから、間違いないと思いました。
「ユ、ユリアさんですか?」
おっかなびっくり聞くと、右眉が少しだけ上がりました。
『で、ここにはどう行けばいいの? 答えてくれますか?』
聞かれたことにだけ答えろという感じで、クールに言われました。

そのプリントアウトした紙を見ると、よく知ってるショップでした。
大型の店で、フィギュアやマンガDVD等々、中古、新品、古い物からなんでも置いてあって、店員さんがコスプレしているので有名なあそこでした。

「はい、ここから歩いて5分くらいです。場所は?」
場所の説明をしようとすると、さえぎるように
『後ろ付いてくから、案内して』
と、短く言いました。
それは、お願いする態度ではなく、決定事項を下僕に告げるような口調でした。
僕は、正直、怒りよりもゾクゾクしていました。

そして、あの映画のあの場面のように、”親方、空から女の子が!!”と、叫びたいような気持ちでした。
何か、ワクワクすることが始まった! そんな気持ちでした。

「わかりました。付いてきて下さい」
僕はそう言って、彼女の前を歩き始めました。
それと同時に、スケジュールを思い出していました。フィギュアスケートの試合のスケジュールは、ほぼ頭に入っています。
ユリアが何をしに日本に来たのか、推測が始まりました。

今は、シーズンオフなので、試合もないはずです。
エキシビションか、、、
ここで思い出しました。

うろ覚えですが、日本のテレビ番組に出る予定があったはずです。
収録がてら、観光かな?
そう思いながら、真っ直ぐショップを目指します。
すれ違う人達が、ガン見する感じです。
秋葉に集う人間に、ユリアはアニメキャラのように神々しく映るはずです。
二次でもスゲぇと、、
僕は、ユリアと気づかれないか、ドキドキでした。
多分、バレたらパニックになる、、、 そんな気がしました。

それは彼女も感じたようで、人が増えてくると、サングラスと帽子をしました。
これだけで、かなりわかりづらくなりました。
その上、彼女は黙ってると、プンプンオーラが出てるので、怖くて声をかけられないと思います。

僕は、不思議な気持ちでした。
あのユリアを先導している。そう思うと、テンションが上がりまくります。
でも、話しかけることも出来ず、それどころか、振り返ることすら出来ずに、足音だけを頼りに、彼女がついてきていることを確認します、、、

そうこうしているうちに、あっけなく、何もイベントが起きないまま、なんのフラグも立たずにショップに着きました、、

「ここです。お疲れ様でした」
案内して疲れたのは僕なのに、彼女のオーラに気圧されて、こんな事を言いました。

すると、ユリアはニコッと笑って、
『ありがとう』
と、一言だけ言いました。

その冷たい氷のような顔が、笑顔になっただけで、魂を奪い取られる感じでした。
もともと、2番目に好きなスケーターでしたが、この瞬間、一番好きになりました。
好きになったと言うよりも、恋に落ちた感じでした、、、

「ど、どういたしまして」
ドモリながら答えて、会釈をしてその場を去ろうとしました。
すると、後ろから、シャツの裾を引っ張られました。
『なんて書いてあるか、通訳して』
と、またお願いではなく、決定事項の通知という感じで言われました。

僕は断ることも出来ずに、それどころか、嬉しいと思いながら、
「喜んで!」
と、力強く言いました。

その僕の言い方に、ユリアはフッと軽い笑みをこぼしました。
もう、この笑顔のためなら、なんでも出来る!! そう思うほどの破壊力でした。

彼女は、テレビで見るよりも、背は小さく感じます。でも、体つきは、きゃしゃではありませんでした。
さすがにアスリートというか、筋肉を感じる体つきでした。
そして、意外に胸があることに驚きました。それほどデカくはないですが、イメージよりは大きいです。
テレビやネットで見る彼女は、ぺったんこなので、成長期で育ったのかな? 
それとも、試合中はさらしでも巻いているのかな?と思いました。

僕は、今度は逆に彼女についていきます。
彼女は、フィギュアコーナーを見て、ハガレンのところで足を止めました。
そして、サングラスを外して、熱心にショーケースの中を見始めます。
本当に、鋼の錬金術師は外国でも人気なんだなぁと感心しました。
エド推しかな?と思っていたら、まさかのブラッドレイ推しで、熱心にフィギュアを見て、僕に価格とか、ポップの文章を翻訳させました。

マスタングも好きなようで、嬉しそうに見ています。
と言っても、顔は笑顔ではなく、相変わらず冷たく感じるほどの美しさのままでしたが、目が笑っています。

やっぱり、まだまだ子供なんだなぁと、少し安心しました。

そして、5つほどフィギュアを買いました。
包んでもらっている間、僕をレジに残して、店内を見回りに行くユリア。
ちょっと心配でしたが、ここにいるお客さん達が、ユリアに声をかけられるとは思えないので、まぁ大丈夫かと思いました。

そして、包装が終わり、ユリアを探すと、奥の古い物が置いてあるコーナーにいました。
熱心に見ている彼女は、さっきハガレングッズを見ているときよりも、はっきりとした笑顔です。
無邪気に、年相応のこぼれんばかりの笑顔で見つめるその先には、コロ助の目覚まし時計がありました。

へぇ、、 コロ助好きなんだ、、 と、ちょっと驚きながら後ろに立ち、声をかけました。
「コロ助、好きなんだ?」
すると、彼女は驚いた顔で振り返り、美しい白い顔を少し赤らめながら
「な、何それ?知らない。終わったの? じゃあ、行くよ」
と、動揺しながら僕のシャツを掴んで、引っ張っていきます、、

頬を赤らめて、慌てている彼女。
人間らしいところを見た感じです。氷のように見えても、やっぱり女の子なんだなぁと思いました。

店を出ると、彼女が僕のシャツから手を離しました。
あぁ、終わってしまった、、、 でも、彼女の色んな一面が見られて良かった、、 本当にラッキーだった、、 そう思っていると、
『お腹すいた。ソバが食べたい』
と、ユリアが言いました。また、冷たい感じの、通知口調でしたが、僕は嬉しくなりました。

まだ一緒にいられる上に、食事まで出来る!!
小躍りしそうでした。
そして、秋葉では有名なソバ屋に連れて行きました。
ユリアは、珍しそうに店内を見回しています。

そこで僕は行動に出ました。おそらく、このまま何もしなかったら、ただのガイドで終わるはずです。さして記憶にも残らないはずです。

僕は、注文を終えると、ちょっと待っててとユリアに言い、ダッシュでさっきのショップに戻り、コロ助の目覚まし時計を買いました。

そして戻ると、彼女はもうソバを食べていました。
僕を待つことなく、食べている彼女。
僕が戻っても、チラッと見るだけです、、、

彼女は、音を立てないように、慎重ににすすっています。
僕は、
「ソバは音を立てて良いって言う日本のルールだよ」
と、教えました。
彼女は、ちょっと目を大きく開けて、驚いたという顔をしたあと、それでも僕を真似て、ソバをすすりました。

最初は少し気にしながら、恥ずかしそうにすすっていましたが、だんだん慣れてきたようで、普通の日本人みたいに食べ始めました。

そして食べ終えて、そば湯を注いであげると、珍しそうに、不思議そうに飲みました。
「美味しい! このスープ、何?」
と、聞いてきました。
説明すると、感心したようにうなずき、飲み干しました。
そして、僕が飲んでいるのを、僕の手から奪い取り、飲み干しました。
僕は、ドキドキしてたまりませんでした。 間接キス、、、 そんな言葉が頭を巡りました。

そして、それも飲み干すと、”美味しかった”と満足そうに言いました。

そして、僕はこのタイミングで、コロ助が包まれている袋を渡しました。
「なに? くれるの?」
あまり関心がなさそうに言うユリア。

無造作に、つつみを破っていきます。
すると、コロ助の外箱が見えてきて、ユリアは一瞬で全開の笑顔になりました。
そして、ニコニコしながら、箱から取り出します。
黙っていると、冷たい氷のような彼女が、太陽のように無邪気な笑顔でコロ助をいじくり回します。

”朝なりよ! まだ眠いなりか? 遅刻するなり!!”
コロ助が、そう叫びました。
すると、もっと笑顔になった彼女が、
『なんて言ったの?』
と、聞いてきました。

通訳して教えると、片言で
『チコクゥスルゥナリィ アサァ、ナリィィヨォゥ』
と、何度も繰り返します。

僕は、その姿を見て、心から幸せでした。ユリアのこんな姿が見られた、、 ラッキーという言葉では足りないくらいです。

「プレゼントだよ。世界選手権銀メダル、おめでとう」
僕はそう言いました。
『あ、ありがとう、、  もらっといてあげる』
そんな言い方をしながらも、照れた感じで、ずっとコロ助を触り続けています、、、

なまじ黙ってると、氷の女王様のような感じなので、今のこの可愛い仕草とか、照れた感じがたまらなく可愛いと思いました。

僕は、多分少しニヤけながら見ていたのだと思います。
『名前は?』
急にユリアが聞いてきました。僕は、今さら?とも思いましたが
「ユウだよ」
と言いました。
『ユヅルじゃないんだ、、 ホント、似てる、、』
ユリアは不思議そうな顔で、ボソッと言いました。
自分では、そんなに似ているかな?と思うのですが、ロシア人にはそっくりに見えるのかも知れません。

「ゴメンね、似てて、、 やっぱり、本当に好きなんだ?」
僕は、ネットでの噂をストレートで聞きました。
彼女は、ネットにあげられた彼とのツーショット写真に、わざわざ”いいね”しているそうなので、相当好きなんだろうなと思います。噂では、プーチンとの写真には”いいね”しなかったそうです、、、

『な、なに言ってんの? バカじゃないの!』
顔を真っ赤にして強がる彼女、、 透けるような白い顔が、本当に笑ってしまうほど赤い顔になっています。
僕がそれを見て笑っていると、急に真顔になって、黙って見つめられました。
彼女が黙って見つめてくると、その青い瞳に吸い込まれそうになり、ちょっと怖くなりました。

「ご、ごめんなさい、、 これから、どうするの? ホテルまで、帰れるの?」
僕は、そう聞きました。
『浅草寺に連れてってくれる?』
ユリアは、それには答えずに、短く言いました。
「え?あ、あぁ、いいよ、行こう!」
僕は、予想外の言葉に驚きましたが、嬉しくて仕方ありません。

会計を済ませて、店を出ました。
そして、つくばエクスプレスの駅に向かいました。
駅が近くなると、すごい人混みになってきて、ユリアは驚いているようでした。
もしかして、これだけの人混みはロシアにはないのかな?と思いながらも、少し足を緩めると、ユリアが手を繋いできました。

小さな可愛らしい手で、僕の手をギュッと握る彼女。不安そうな感じが伝わってきます。
僕は飛び上がりそうなほど嬉しかったです。
まさか、あのユリアと手を繋いで街を歩けるなんて、想像したことすらありませんでした。

僕は、そのまま手を引っ張り、電車に乗りました。
そして、浅草寺や浅草を色々と観光しました。
浅草寺で、香煙を”良くしたいところに塗り込むと、良くなる”とか教えてあげました。

ユリアは、ふ?んとか言いながら、”変なの”と、興味なさそうに言いましたが、僕が頭に香煙塗りながら、”頭が良くなりますように”と言うと、笑っていました。

そして彼女が、僕が見ていない隙に、慌てて胸に塗り込んでいるのを見逃しませんでした。
やっぱり、胸は大きくしたいモノなんでしょうか? 
競技には邪魔になる気がしますし、彼女のキャラクターには、貧乳のほうが似合う気がします。

もう、何時間も一緒にいて、彼女のことがわかってきました。
彼女が冷たく感じるのは、笑顔と真顔のギャップが強すぎるからで、彼女自身は別に冷たい人間ではないということ。
黙っていると、大人びて見えるけど、中身は無邪気な子供ということ。
そんな事がわかってきました。

そして、彼女も僕に慣れてきてくれたみたいで、ニコッと笑いかけてくれるようになっていました。
もう、まるっきりデートのような感じです。
僕は、この短時間で、一生分の運を使い果たした気持ちになりました。

そして、日も落ちて、辺りも暗くなってきました。
「じゃあ、そろそろ帰った方がいいよね? 同行の人も、心配してるんじゃないの?」
僕は、まだ一緒に過ごしたい気持ちを押し殺して、大人としての意見を言いました。

『ユウの家は近いの?』
ユリアは、また僕の話を無視してこんな質問をしました。
「え? あぁ、近いよ。歩いても、20分くらいだよ」
『じゃあ、ちょっと見せて。日本人の部屋、見てみたいから』
ユリアは、とんでもないことを言い始めました。
僕の部屋に来る? ユリアが!? 今まで、女性は誰一人来たことのない僕の部屋に!?

ちょっとパニクりました。
でも、ユリアも微妙に緊張している感じです。
僕は、
「いいけど、狭いし、散らかってるよ」
と念を押しました。

『どっち? 行くよ』
ユリアは、また僕の言葉を無視して、勝手に歩き始めます。
「ち、違う、こっち、こっちだよ!」
慌てて声をかけて、方向を修正します。
すると、また僕の手を握ってきました。
『早く言いなさいよ。はい、出発』
冷たい目で言うユリア。また、僕は気圧されながら
「は、はい、ゴメンなさい」
と、謝ってしまいました。

すると、今までと違って、ユリアがニコッと笑いながら
『そんなしゃべり方しないでいいよ。友達と話すみたいにして』
と、言いました。
僕は、この年下の美少女に、翻弄され続けています。でも、それが楽しいとも思っていました。

そして、彼女と手を繋いで、歩き始めました。
恥ずかしい話ですが、僕はこの歳になるまで、女性と手を繋いで歩いたことはありませんでした。
当然、デートもしたことがなかったので、初デートの相手がユリアということになります。

道案内だけだと思っていたのに、本当にワクワクするようなことが始まった感じです。
いきなり始まった非日常。ユリアはもしかして飛行石のネックレスをしているのではないか?などと、下らない妄想が広がります。

どっぷりと妄想に浸っていたら、急に手を引っ張られました。
慌てて足を止めると、ユリアは、
『あそこに行きたい』
と言って、そちらに歩いて行きます。
すべての決定権は、彼女にあるという感じですが、こういうのは嫌いじゃないです。それどころか、弱気な僕は引っ張ってもらう方が好きかも知れません。

彼女が興味を持ったのは、コンビニでした。
中に入ると、色々なお菓子を手にとって、不思議そうな顔をしたり、ニコッと笑ったりしながら、どんどんと手に取ったかごに突っ込んでいきます。

そして、ちょっとした小物というか、オモチャ的なグッズにも興味を示し、アンパンマンのヤツや、プリキュアのものをかごに入れました。
やっぱり、こう言うのを見ると、見た目はクールでも、中身はただの女の子だなぁと思いました。

そして、彼女は500円クジにも目をつけました。たまたまサンリオ系のヤツだったので、猛烈に興味を示し、商品をかごに突っ込もうとしました。
慌てて止めて、それはクジだという説明をしたら、頬を少し膨らませて、不満そうな顔をしました。
そんな表情をしたのは、テレビでもネットでも見たことがないので、腰が砕けそうなほど萌えました。

そして、レジで会計をして、クジを引きました。
こう言ってはなんですが、世界レベルのアスリートは、やはり非凡な存在なんだと思いました。一発で、さっきかごに入れようとした商品を引き当てました。
彼女は、ロシア語で叫びながら、その場で飛び上がりました。
店員のおばさんも、良かったねぇ?などと言いながら、商品をバーコードリーダーに通し、ユリアに渡してくれました。

ユリアは、袋はいらないと手で制し、その大きめのぬいぐるみを抱きかかえます。
ぬいぐるみを抱えて、ニコニコしている彼女は、本物の天使に見えました。

そして、上機嫌な彼女は、ぬいぐるみを抱えたまま、僕の手を握ってきました。
書き忘れていましたが、彼女の大きめのカバンは、最初の段階で、当然のように僕が持たされていました。あまりに自然に、当然のように僕に持たせたので、持つのが当たり前と思っていました、、、

そして、僕の家に着きました。
ごく普通の1Kのマンションです。
ユリアには狭いと言いましたが、駅から少し遠いのと、若干古いので、居住スペースは35?くらいあり、そこそこ大きめです。

でも、ユリアは部屋に上がると、
「部屋はこれだけ?」
と、驚いた感じでした。
ロシアの住宅事情は知りませんが、1Kという間取りが不思議なようです。

彼女は僕のフィギュアの棚や、マンガ、DVDの棚を興味深そうに見ています。
そして、ハガレンのDVDを見つけると、再生しろと言いました。

僕の部屋には、ソファなんてありません。自然に、二人並んでベッドに腰掛けて、DVDを見ることになりました。

僕は、コップなどを持ってきて、緊張しながら彼女の横に座ろうとすると、彼女が慌てた顔で、少し横にずれました。
僕も、そんなにくっついて座ろうとしたわけではないのですが、かなり距離を開けられました。
まぁ、初対面の男性の家に上がったのだから、無理もないなと思って、そのまま座りました。

そして、テーブルのリモコンを取ろうとして、少し体を動かしたら、彼女がアスリートの機敏さで、立ち上がりました。
『な、なに!?』
彼女は、驚くというか、ちょっと不安そうな顔で僕に言いました。
「え?あぁ、、その、リモコンを、、」
僕が説明すると、
『あ、あぁ、そう、、 ビックリさせないでよ!』
と言いながら、また座りました。

部屋に入ってから、彼女のキャラが変わりました。
勝ち気でクールな感じの女王様。そんな感じだった彼女が、か弱い小動物みたいな感じになっています。

ずっとスポーツ漬けだった彼女は、もしかしたら男性に慣れていないのかも知れない、、、
そう思いました。

とは言っても、二人きりでベッドの上に座っている状況でも、僕は何も出来ないと自覚しています。

そして、僕のそんな弱気を理解したのか、ユリアも緊張が解けてきたようです。
さっき買ったお菓子を食べながら、DVDを鑑賞しました。

彼女は、たこ焼きを作る駄菓子みたいなのを、興味深く作っていました。
水を混ぜて、型に入れてこねて、ソースをかけるだけなのですが、目をキラキラさせながらやっています。
そして、完成すると、無造作に僕の口に近づけました。

まさか、こんな風に食べさせてもらえるなんて思ってもいなかったので、メチャ嬉しかったです。
パクッと食べて、美味しいと大げさに言うと、ニコッと笑ってくれました。
そして、自分も食べて、
『美味しい』
と、僕に笑いかけました。

なんか、恋人になった気分です。
彼女は、僕が買ってあげたコロ助を取り出しました。
ニコニコとしながら、撫でています。
すると、自分のカバンからサインペンを取り出して、裏側の足の部分に
『ここに、ユウの名前書いて』
と、ぶっきらぼうに、照れた感じで言いました。

この子は、本当にギャップがたまりません。
乙女と、女王様が、コロコロ入れ替わります。

僕は、漢字で名前を書きました。すると今度は、シールとか色々と貼ってある可愛らしいノートみたいなものを取り出して、真っ白なページを開きながら
『メールアドレス』
と、僕の方を見ずに、一言だけボソッと言いました。
彼女の横顔を見ると、耳まで赤くなっています。
僕は、本気で惚れました。

有頂天でメールアドレスと、携帯番号も書いてみました。そして、facetimeもやってると説明しながらノートを返しました。

すると、彼女がカバンから小さなポシェット?みたいなものを取り出し、キッチンの方に行きました。
トイレかな?と思って、黙って待っていると、僕のiPhoneに着信がありました。
見ると、facetimeで、見たことのないアドレスからでした。
出ると、ユリアが映りました。
彼女は、画面の中でニコッと笑うと
『登録しといてね』
と、上機嫌で言ってくれました。

そして、すぐに部屋に戻ってくると、僕に太ももが触れるくらいの近さに座りました。
僕は、一気に緊張しました。

緊張しすぎて、ユリアの方を一切見られなくなりました。
こんな緊張しながらDVDを見たことはありません。

すると、今度は彼女の頭が、僕の腕に当たりました。
彼女が、僕に体をもたれさせてきました。
彼女の良い匂いがして、クラクラしてきました。

鈍い僕でも、これはOKのサインだとわかります。
でも、悲しいかな、経験がないのでどうして良いのかわかりません。

あの憧れの天使が、すぐ横にいて、OKのサインを出している。
心臓が体から飛び出しそうなくらい早く脈打っています。

そんな情けない僕ですが、彼女はさらに僕の手を握ってきました。
彼女の手は、汗ですごく湿っていて、微妙に震えている感じでした。
僕は、やっと気がつきました。彼女も、勇気を持って頑張ってくれていることに、、、

僕は、逮捕されて、国際問題になっても後悔しないと決意して、思い切って彼女にキスをしました。

彼女の方を向き、顔を彼女の顔に近づけていきます。
悲鳴を上げられて、逮捕される自分を強く想像しながら、勇気を奮い起こして顔を近づけると、奇跡が起きました。
彼女の方も、すっと目を閉じて、顔を持ち上げてくれました。

こんなにも美しいキス待ちの顔は、映画でも見たことがないです。
ただただ美しい。吸い込まれるように唇を重ねると、彼女がビクッとなりました。
僕は、それに驚いて、慌てて唇を離そうとしましたが、彼女がガシッとしがみついてくれました。

ロシアの天使が空から落ちてきた

僕は、23歳の大学生で、休学していたのでまだ2年生です。
昔から、英語が好きで、休学していたのもアメリカを放浪していたからです。

そのおかげもあって、映画はしゃべるのも含めて、問題ないレベルです。
とは言っても、英語が出来るくらいで就職が有利になる時代でもないので、すでに就職に関しては色々と調べて動いていました。

僕は、自分ではそこそこ整った顔だと思っていますが、いわゆる草食系なので、彼女もこの歳まで作ることが出来ませんでした。とは言っても、それほど強く欲しいと思っているわけではないので、毎日趣味などで楽しく過ごしていました。
趣味と言っても、アニメを見たり、フィギュアスケートを見たりするくらいですが、それで毎日充分楽しいです。


そんなある日、秋葉に買い物に行って、ちょっと外れの方にあるショップに向かう途中、いきなり英語で声をかけられました。
『あなたは、英語しゃべれるのかしら? 本当に、誰もしゃべれないって、信じられない!』
と、かなりイライラした感じで言われました。
振り返ると、ちょっと大きめのコロ付きのバッグを持った、小柄な金髪の白人さんがいました。
どう見てもまだ子供なんですが、恐ろしいほどの美しさで、射抜くような青い目で僕をじっと見つめていました。

僕は、気圧されるように、
「しゃべれます。なんでしょうか?」
と、気弱に言ってしまいました。

僕をじっと見ていた美少女は、
『ハニュー、、、』
と、ボソッと言いました。
「あ、違います。別人です。似てると言われますが、違います」
と、しどろもどろで答えました。

僕は、フィギュアスケートの羽生選手と似ていると言われることがあります。
彼が話題になるようになってからは、にわかに僕もモテ期が来たのかな?と、思うくらい、女子に話しかけられるようになりました。
でも、顔はちょっと似てるけど、羽生選手とはスペックが違いすぎます。僕は弱気ですし、スポーツもダメ、勉強も英語以外はごくごく普通、、 本当に、同じ人類とは思えないくらい、彼とは差があると思います。


『わかってる、、 ねぇ、ここにはどう行けばいいの?』
英語が通じるのがわかって、イライラも収まったのか、普通の口調でした。
でも、ニコリともせずに、淡々と言う彼女は、氷のように冷たい印象でした。
それにしても、驚くほどの美少女です、、、

そこで僕は気がつきました。
この子は、リプニ○カヤさんだと、、、
フィギュアスケートを見るのが好きな僕ですから、間違いないと思いました。
「ユ、ユリアさんですか?」
おっかなびっくり聞くと、右眉が少しだけ上がりました。
『で、ここにはどう行けばいいの? 答えてくれますか?』
聞かれたことにだけ答えろという感じで、クールに言われました。


そのプリントアウトした紙を見ると、よく知ってるショップでした。
大型の店で、フィギュアやマンガDVD等々、中古、新品、古い物からなんでも置いてあって、店員さんがコスプレしているので有名なあそこでした。


「はい、ここから歩いて5分くらいです。場所は〜」
場所の説明をしようとすると、さえぎるように
『後ろ付いてくから、案内して』
と、短く言いました。
それは、お願いする態度ではなく、決定事項を下僕に告げるような口調でした。
僕は、正直、怒りよりもゾクゾクしていました。

そして、あの映画のあの場面のように、”親方、空から女の子が!!”と、叫びたいような気持ちでした。
何か、ワクワクすることが始まった! そんな気持ちでした。

「わかりました。付いてきて下さい」
僕はそう言って、彼女の前を歩き始めました。
それと同時に、スケジュールを思い出していました。フィギュアスケートの試合のスケジュールは、ほぼ頭に入っています。
ユリアが何をしに日本に来たのか、推測が始まりました。

今は、シーズンオフなので、試合もないはずです。
エキシビションか、、、
ここで思い出しました。

うろ覚えですが、日本のテレビ番組に出る予定があったはずです。
収録がてら、観光かな?
そう思いながら、真っ直ぐショップを目指します。
すれ違う人達が、ガン見する感じです。
秋葉に集う人間に、ユリアはアニメキャラのように神々しく映るはずです。
二次でもスゲぇと、、
僕は、ユリアと気づかれないか、ドキドキでした。
多分、バレたらパニックになる、、、 そんな気がしました。


それは彼女も感じたようで、人が増えてくると、サングラスと帽子をしました。
これだけで、かなりわかりづらくなりました。
その上、彼女は黙ってると、プンプンオーラが出てるので、怖くて声をかけられないと思います。


僕は、不思議な気持ちでした。
あのユリアを先導している。そう思うと、テンションが上がりまくります。
でも、話しかけることも出来ず、それどころか、振り返ることすら出来ずに、足音だけを頼りに、彼女がついてきていることを確認します、、、


そうこうしているうちに、あっけなく、何もイベントが起きないまま、なんのフラグも立たずにショップに着きました、、


「ここです。お疲れ様でした」
案内して疲れたのは僕なのに、彼女のオーラに気圧されて、こんな事を言いました。

すると、ユリアはニコッと笑って、
『ありがとう』
と、一言だけ言いました。

その冷たい氷のような顔が、笑顔になっただけで、魂を奪い取られる感じでした。
もともと、2番目に好きなスケーターでしたが、この瞬間、一番好きになりました。
好きになったと言うよりも、恋に落ちた感じでした、、、

「ど、どういたしまして」
ドモリながら答えて、会釈をしてその場を去ろうとしました。
すると、後ろから、シャツの裾を引っ張られました。
『なんて書いてあるか、通訳して』
と、またお願いではなく、決定事項の通知という感じで言われました。

僕は断ることも出来ずに、それどころか、嬉しいと思いながら、
「喜んで!」
と、力強く言いました。

その僕の言い方に、ユリアはフッと軽い笑みをこぼしました。
もう、この笑顔のためなら、なんでも出来る!! そう思うほどの破壊力でした。


彼女は、テレビで見るよりも、背は小さく感じます。でも、体つきは、きゃしゃではありませんでした。
さすがにアスリートというか、筋肉を感じる体つきでした。
そして、意外に胸があることに驚きました。それほどデカくはないですが、イメージよりは大きいです。
テレビやネットで見る彼女は、ぺったんこなので、成長期で育ったのかな? 
それとも、試合中はさらしでも巻いているのかな?と思いました。


僕は、今度は逆に彼女についていきます。
彼女は、フィギュアコーナーを見て、ハガレンのところで足を止めました。
そして、サングラスを外して、熱心にショーケースの中を見始めます。
本当に、鋼の錬金術師は外国でも人気なんだなぁと感心しました。
エド推しかな?と思っていたら、まさかのブラッドレイ推しで、熱心にフィギュアを見て、僕に価格とか、ポップの文章を翻訳させました。

マスタングも好きなようで、嬉しそうに見ています。
と言っても、顔は笑顔ではなく、相変わらず冷たく感じるほどの美しさのままでしたが、目が笑っています。

やっぱり、まだまだ子供なんだなぁと、少し安心しました。

そして、5つほどフィギュアを買いました。
包んでもらっている間、僕をレジに残して、店内を見回りに行くユリア。
ちょっと心配でしたが、ここにいるお客さん達が、ユリアに声をかけられるとは思えないので、まぁ大丈夫かと思いました。


そして、包装が終わり、ユリアを探すと、奥の古い物が置いてあるコーナーにいました。
熱心に見ている彼女は、さっきハガレングッズを見ているときよりも、はっきりとした笑顔です。
無邪気に、年相応のこぼれんばかりの笑顔で見つめるその先には、コロ助の目覚まし時計がありました。

へぇ、、 コロ助好きなんだ、、 と、ちょっと驚きながら後ろに立ち、声をかけました。
「コロ助、好きなんだ?」
すると、彼女は驚いた顔で振り返り、美しい白い顔を少し赤らめながら
「な、何それ?知らない。終わったの? じゃあ、行くよ」
と、動揺しながら僕のシャツを掴んで、引っ張っていきます、、

頬を赤らめて、慌てている彼女。
人間らしいところを見た感じです。氷のように見えても、やっぱり女の子なんだなぁと思いました。


店を出ると、彼女が僕のシャツから手を離しました。
あぁ、終わってしまった、、、 でも、彼女の色んな一面が見られて良かった、、 本当にラッキーだった、、 そう思っていると、
『お腹すいた。ソバが食べたい』
と、ユリアが言いました。また、冷たい感じの、通知口調でしたが、僕は嬉しくなりました。

まだ一緒にいられる上に、食事まで出来る!!
小躍りしそうでした。
そして、秋葉では有名なソバ屋に連れて行きました。
ユリアは、珍しそうに店内を見回しています。

そこで僕は行動に出ました。おそらく、このまま何もしなかったら、ただのガイドで終わるはずです。さして記憶にも残らないはずです。

僕は、注文を終えると、ちょっと待っててとユリアに言い、ダッシュでさっきのショップに戻り、コロ助の目覚まし時計を買いました。


そして戻ると、彼女はもうソバを食べていました。
僕を待つことなく、食べている彼女。
僕が戻っても、チラッと見るだけです、、、

彼女は、音を立てないように、慎重ににすすっています。
僕は、
「ソバは音を立てて良いって言う日本のルールだよ」
と、教えました。
彼女は、ちょっと目を大きく開けて、驚いたという顔をしたあと、それでも僕を真似て、ソバをすすりました。

最初は少し気にしながら、恥ずかしそうにすすっていましたが、だんだん慣れてきたようで、普通の日本人みたいに食べ始めました。

そして食べ終えて、そば湯を注いであげると、珍しそうに、不思議そうに飲みました。
「美味しい! このスープ、何?」
と、聞いてきました。
説明すると、感心したようにうなずき、飲み干しました。
そして、僕が飲んでいるのを、僕の手から奪い取り、飲み干しました。
僕は、ドキドキしてたまりませんでした。 間接キス、、、 そんな言葉が頭を巡りました。


そして、それも飲み干すと、”美味しかった”と満足そうに言いました。

そして、僕はこのタイミングで、コロ助が包まれている袋を渡しました。
「なに? くれるの?」
あまり関心がなさそうに言うユリア。

無造作に、つつみを破っていきます。
すると、コロ助の外箱が見えてきて、ユリアは一瞬で全開の笑顔になりました。
そして、ニコニコしながら、箱から取り出します。
黙っていると、冷たい氷のような彼女が、太陽のように無邪気な笑顔でコロ助をいじくり回します。

”朝なりよ! まだ眠いなりか? 遅刻するなり!!”
コロ助が、そう叫びました。
すると、もっと笑顔になった彼女が、
『なんて言ったの?』
と、聞いてきました。

通訳して教えると、片言で
『チコクゥスルゥナリィ アサァ、ナリィィヨォゥ』
と、何度も繰り返します。

僕は、その姿を見て、心から幸せでした。ユリアのこんな姿が見られた、、 ラッキーという言葉では足りないくらいです。

「プレゼントだよ。世界選手権銀メダル、おめでとう」
僕はそう言いました。
『あ、ありがとう、、  もらっといてあげる』
そんな言い方をしながらも、照れた感じで、ずっとコロ助を触り続けています、、、

なまじ黙ってると、氷の女王様のような感じなので、今のこの可愛い仕草とか、照れた感じがたまらなく可愛いと思いました。

僕は、多分少しニヤけながら見ていたのだと思います。
『名前は?』
急にユリアが聞いてきました。僕は、今さら?とも思いましたが
「ユウだよ」
と言いました。
『ユヅルじゃないんだ、、 ホント、似てる、、』
ユリアは不思議そうな顔で、ボソッと言いました。
自分では、そんなに似ているかな?と思うのですが、ロシア人にはそっくりに見えるのかも知れません。

「ゴメンね、似てて、、 やっぱり、本当に好きなんだ?」
僕は、ネットでの噂をストレートで聞きました。
彼女は、ネットにあげられた彼とのツーショット写真に、わざわざ”いいね”しているそうなので、相当好きなんだろうなと思います。噂では、プーチンとの写真には”いいね”しなかったそうです、、、

『な、なに言ってんの? バカじゃないの!』
顔を真っ赤にして強がる彼女、、 透けるような白い顔が、本当に笑ってしまうほど赤い顔になっています。
僕がそれを見て笑っていると、急に真顔になって、黙って見つめられました。
彼女が黙って見つめてくると、その青い瞳に吸い込まれそうになり、ちょっと怖くなりました。

「ご、ごめんなさい、、 これから、どうするの? ホテルまで、帰れるの?」
僕は、そう聞きました。
『浅草寺に連れてってくれる?』
ユリアは、それには答えずに、短く言いました。
「え?あ、あぁ、いいよ、行こう!」
僕は、予想外の言葉に驚きましたが、嬉しくて仕方ありません。

会計を済ませて、店を出ました。
そして、つくばエクスプレスの駅に向かいました。
駅が近くなると、すごい人混みになってきて、ユリアは驚いているようでした。
もしかして、これだけの人混みはロシアにはないのかな?と思いながらも、少し足を緩めると、ユリアが手を繋いできました。

小さな可愛らしい手で、僕の手をギュッと握る彼女。不安そうな感じが伝わってきます。
僕は飛び上がりそうなほど嬉しかったです。
まさか、あのユリアと手を繋いで街を歩けるなんて、想像したことすらありませんでした。


僕は、そのまま手を引っ張り、電車に乗りました。
そして、浅草寺や浅草を色々と観光しました。
浅草寺で、香煙を”良くしたいところに塗り込むと、良くなる”とか教えてあげました。

ユリアは、ふ〜んとか言いながら、”変なの”と、興味なさそうに言いましたが、僕が頭に香煙塗りながら、”頭が良くなりますように”と言うと、笑っていました。

そして彼女が、僕が見ていない隙に、慌てて胸に塗り込んでいるのを見逃しませんでした。
やっぱり、胸は大きくしたいモノなんでしょうか? 
競技には邪魔になる気がしますし、彼女のキャラクターには、貧乳のほうが似合う気がします。


もう、何時間も一緒にいて、彼女のことがわかってきました。
彼女が冷たく感じるのは、笑顔と真顔のギャップが強すぎるからで、彼女自身は別に冷たい人間ではないということ。
黙っていると、大人びて見えるけど、中身は無邪気な子供ということ。
そんな事がわかってきました。

そして、彼女も僕に慣れてきてくれたみたいで、ニコッと笑いかけてくれるようになっていました。
もう、まるっきりデートのような感じです。
僕は、この短時間で、一生分の運を使い果たした気持ちになりました。


そして、日も落ちて、辺りも暗くなってきました。
「じゃあ、そろそろ帰った方がいいよね? 同行の人も、心配してるんじゃないの?」
僕は、まだ一緒に過ごしたい気持ちを押し殺して、大人としての意見を言いました。

『ユウの家は近いの?』
ユリアは、また僕の話を無視してこんな質問をしました。
「え? あぁ、近いよ。歩いても、20分くらいだよ」
『じゃあ、ちょっと見せて。日本人の部屋、見てみたいから』
ユリアは、とんでもないことを言い始めました。
僕の部屋に来る? ユリアが!? 今まで、女性は誰一人来たことのない僕の部屋に!?

ちょっとパニクりました。
でも、ユリアも微妙に緊張している感じです。
僕は、
「いいけど、狭いし、散らかってるよ」
と念を押しました。

『どっち? 行くよ』
ユリアは、また僕の言葉を無視して、勝手に歩き始めます。
「ち、違う、こっち、こっちだよ!」
慌てて声をかけて、方向を修正します。
すると、また僕の手を握ってきました。
『早く言いなさいよ。はい、出発』
冷たい目で言うユリア。また、僕は気圧されながら
「は、はい、ゴメンなさい」
と、謝ってしまいました。

すると、今までと違って、ユリアがニコッと笑いながら
『そんなしゃべり方しないでいいよ。友達と話すみたいにして』
と、言いました。
僕は、この年下の美少女に、翻弄され続けています。でも、それが楽しいとも思っていました。

そして、彼女と手を繋いで、歩き始めました。
恥ずかしい話ですが、僕はこの歳になるまで、女性と手を繋いで歩いたことはありませんでした。
当然、デートもしたことがなかったので、初デートの相手がユリアということになります。

道案内だけだと思っていたのに、本当にワクワクするようなことが始まった感じです。
いきなり始まった非日常。ユリアはもしかして飛行石のネックレスをしているのではないか?などと、下らない妄想が広がります。


どっぷりと妄想に浸っていたら、急に手を引っ張られました。
慌てて足を止めると、ユリアは、
『あそこに行きたい』
と言って、そちらに歩いて行きます。
すべての決定権は、彼女にあるという感じですが、こういうのは嫌いじゃないです。それどころか、弱気な僕は引っ張ってもらう方が好きかも知れません。


彼女が興味を持ったのは、コンビニでした。
中に入ると、色々なお菓子を手にとって、不思議そうな顔をしたり、ニコッと笑ったりしながら、どんどんと手に取ったかごに突っ込んでいきます。

そして、ちょっとした小物というか、オモチャ的なグッズにも興味を示し、アンパンマンのヤツや、プリキュアのものをかごに入れました。
やっぱり、こう言うのを見ると、見た目はクールでも、中身はただの女の子だなぁと思いました。


そして、彼女は500円クジにも目をつけました。たまたまサンリオ系のヤツだったので、猛烈に興味を示し、商品をかごに突っ込もうとしました。
慌てて止めて、それはクジだという説明をしたら、頬を少し膨らませて、不満そうな顔をしました。
そんな表情をしたのは、テレビでもネットでも見たことがないので、腰が砕けそうなほど萌えました。

そして、レジで会計をして、クジを引きました。
こう言ってはなんですが、世界レベルのアスリートは、やはり非凡な存在なんだと思いました。一発で、さっきかごに入れようとした商品を引き当てました。
彼女は、ロシア語で叫びながら、その場で飛び上がりました。
店員のおばさんも、良かったねぇ〜などと言いながら、商品をバーコードリーダーに通し、ユリアに渡してくれました。

ユリアは、袋はいらないと手で制し、その大きめのぬいぐるみを抱きかかえます。
ぬいぐるみを抱えて、ニコニコしている彼女は、本物の天使に見えました。

そして、上機嫌な彼女は、ぬいぐるみを抱えたまま、僕の手を握ってきました。
書き忘れていましたが、彼女の大きめのカバンは、最初の段階で、当然のように僕が持たされていました。あまりに自然に、当然のように僕に持たせたので、持つのが当たり前と思っていました、、、


そして、僕の家に着きました。
ごく普通の1Kのマンションです。
ユリアには狭いと言いましたが、駅から少し遠いのと、若干古いので、居住スペースは35㎡くらいあり、そこそこ大きめです。

でも、ユリアは部屋に上がると、
「部屋はこれだけ?」
と、驚いた感じでした。
ロシアの住宅事情は知りませんが、1Kという間取りが不思議なようです。

彼女は僕のフィギュアの棚や、マンガ、DVDの棚を興味深そうに見ています。
そして、ハガレンのDVDを見つけると、再生しろと言いました。

僕の部屋には、ソファなんてありません。自然に、二人並んでベッドに腰掛けて、DVDを見ることになりました。

僕は、コップなどを持ってきて、緊張しながら彼女の横に座ろうとすると、彼女が慌てた顔で、少し横にずれました。
僕も、そんなにくっついて座ろうとしたわけではないのですが、かなり距離を開けられました。
まぁ、初対面の男性の家に上がったのだから、無理もないなと思って、そのまま座りました。


そして、テーブルのリモコンを取ろうとして、少し体を動かしたら、彼女がアスリートの機敏さで、立ち上がりました。
『な、なに!?』
彼女は、驚くというか、ちょっと不安そうな顔で僕に言いました。
「え?あぁ、、その、リモコンを、、」
僕が説明すると、
『あ、あぁ、そう、、 ビックリさせないでよ!』
と言いながら、また座りました。


部屋に入ってから、彼女のキャラが変わりました。
勝ち気でクールな感じの女王様。そんな感じだった彼女が、か弱い小動物みたいな感じになっています。

ずっとスポーツ漬けだった彼女は、もしかしたら男性に慣れていないのかも知れない、、、
そう思いました。

とは言っても、二人きりでベッドの上に座っている状況でも、僕は何も出来ないと自覚しています。


そして、僕のそんな弱気を理解したのか、ユリアも緊張が解けてきたようです。
さっき買ったお菓子を食べながら、DVDを鑑賞しました。

彼女は、たこ焼きを作る駄菓子みたいなのを、興味深く作っていました。
水を混ぜて、型に入れてこねて、ソースをかけるだけなのですが、目をキラキラさせながらやっています。
そして、完成すると、無造作に僕の口に近づけました。

まさか、こんな風に食べさせてもらえるなんて思ってもいなかったので、メチャ嬉しかったです。
パクッと食べて、美味しいと大げさに言うと、ニコッと笑ってくれました。
そして、自分も食べて、
『美味しい』
と、僕に笑いかけました。


なんか、恋人になった気分です。
彼女は、僕が買ってあげたコロ助を取り出しました。
ニコニコとしながら、撫でています。
すると、自分のカバンからサインペンを取り出して、裏側の足の部分に
『ここに、ユウの名前書いて』
と、ぶっきらぼうに、照れた感じで言いました。

この子は、本当にギャップがたまりません。
乙女と、女王様が、コロコロ入れ替わります。


僕は、漢字で名前を書きました。すると今度は、シールとか色々と貼ってある可愛らしいノートみたいなものを取り出して、真っ白なページを開きながら
『メールアドレス』
と、僕の方を見ずに、一言だけボソッと言いました。
彼女の横顔を見ると、耳まで赤くなっています。
僕は、本気で惚れました。

有頂天でメールアドレスと、携帯番号も書いてみました。そして、facetimeもやってると説明しながらノートを返しました。


すると、彼女がカバンから小さなポシェット?みたいなものを取り出し、キッチンの方に行きました。
トイレかな?と思って、黙って待っていると、僕のiPhoneに着信がありました。
見ると、facetimeで、見たことのないアドレスからでした。
出ると、ユリアが映りました。
彼女は、画面の中でニコッと笑うと
『登録しといてね』
と、上機嫌で言ってくれました。


そして、すぐに部屋に戻ってくると、僕に太ももが触れるくらいの近さに座りました。
僕は、一気に緊張しました。

緊張しすぎて、ユリアの方を一切見られなくなりました。
こんな緊張しながらDVDを見たことはありません。

すると、今度は彼女の頭が、僕の腕に当たりました。
彼女が、僕に体をもたれさせてきました。
彼女の良い匂いがして、クラクラしてきました。


鈍い僕でも、これはOKのサインだとわかります。
でも、悲しいかな、経験がないのでどうして良いのかわかりません。


あの憧れの天使が、すぐ横にいて、OKのサインを出している。
心臓が体から飛び出しそうなくらい早く脈打っています。


そんな情けない僕ですが、彼女はさらに僕の手を握ってきました。
彼女の手は、汗ですごく湿っていて、微妙に震えている感じでした。
僕は、やっと気がつきました。彼女も、勇気を持って頑張ってくれていることに、、、


僕は、逮捕されて、国際問題になっても後悔しないと決意して、思い切って彼女にキスをしました。

彼女の方を向き、顔を彼女の顔に近づけていきます。
悲鳴を上げられて、逮捕される自分を強く想像しながら、勇気を奮い起こして顔を近づけると、奇跡が起きました。
彼女の方も、すっと目を閉じて、顔を持ち上げてくれました。

こんなにも美しいキス待ちの顔は、映画でも見たことがないです。
ただただ美しい。吸い込まれるように唇を重ねると、彼女がビクッとなりました。
僕は、それに驚いて、慌てて唇を離そうとしましたが、彼女がガシッとしがみついてくれました。

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