今から約二十年前、両親が離婚した。
当時小学2年生だった俺は、3つ上の兄貴と共に母方の親権になり、それを機に慣れ親しんだ埼玉からお袋の出身地である宮城へ移り住む事になった。
お袋の実家は農家を営んでおり、周辺には民家が数件しかなく、それ以外は全て畑や田んぼという少々不便な場所だった。
俺達兄弟は、近くにある古い木造校舎作りの小学校(現在は廃校)に通う事になった。
1学年1クラスしかなく、しかも全校生徒も100人に満たないという小規模な学校だった。
この学校は女子の比率が多く、俺の学年も13人の内8人が女子だった。
その中でクラスのリーダー的存在だった少女こそが、後に俺の妻となる景子だった。
景子は裕福な寺の三人兄妹の末っ子として生まれ、年の離れた兄二人に可愛がられて育った為、非常に男勝りで勝気な性格の持ち主だった。
当時景子は色黒で、一瞬少年に見間違えそうなる程に中性的な顔立ちだった。
景子の家族は母親を除く全員が長身で、彼女にも遺伝したのか。学年一の長身を誇った俺と比べても殆ど遜色がない身長の持ち主だった。
尚且つベリーショートの髪型にボーイッシュな服装を好み、男口調で一人称も「オレ」であった為、俺も完全に男扱いしていた。
俺と景子は転校当初から仲が良く、毎日の様に放課後や休日も遊び、いつしか互いに唯一無二の親友になっていた。
進級してからもその関係は変わらなかったが、4年生になった前後から景子の身体が、徐々に女性らしい凹凸が出始めたのだ。
本格的に思春期に入ってからはクラスの中で一人、妙に色っぽい体付きをする様になっていた。
いつしか景子もスポーツブラを着け始めたが、俺は敢えて指摘せずに今まで通りに接していた。その頃から少なからず、景子の事を異性として意識する様になっていた。
景子は発育が非常に良く。特に胸の成長は著しく同級生の女子と比べても群を抜いており、圧倒的ボリュームを誇っていた。

そして5年生の春先の放課後、景子に呼び出されて彼女の家に赴いた時の事。
景子の部屋に入った途端、景子が真剣な面持ちに変わったのだ。
「・・・なあ、お前に折り行って相談があるんだが・・・その前に一つ約束してくれないか?・・・何があっても絶対に笑わないって、約束してくれるか?」
「お、おう・・・分かった」
問い質す景子の迫力に負け、俺は手拍子で頷いた。
発言の意図が分からず首を傾げていると、景子は着ていたセーターの裾を捲り上げた。
ブルンッ!と勢いよく白い無地の下着に包まれた乳房が姿を現す。二つの膨らみは成長途中ながらも確かな谷間を作っていた。
景子は小学5年生ながら既に、学生用の所謂制服ブラを身に着けていた。
「お、お前も・・・そういうのする様になったんだな?」
「うん、母さんがどうしても着けろっていうから・・・仕方なく」
「・・・因みに何カップあるんだ?」
「・・・・・・一応、Cだけど・・・もうすぐDになると思う」
小学生離れしたバストサイズに俺は耳を疑った。
「や、やっぱり、変かな?・・・こういう胸」
「そんな事ないよ。お前だって女の子なんだからいつかは大きくなるだろう?」
「グスン・・・でも・・・まだクラスの誰もブラ着けてないし・・・それに・・・うっ・・・ヒック・・・ただでさえ周りからジロジロ見られてるのに・・・これ以上大きくなると・・・恥ずかしいよ・・・エッグ」
景子は泣きながら、年頃の乙女のデリケートな悩みを語った。
俺は今までに景子のこういった一面を見た事がなく、だからその時の景子が可愛く想えてしょうがなかった。
「俺は、どっちかって言うと・・・お前の胸、好きだぞ」
「・・・本当?」
「うん、本当だよ」
俺の言った気休めを聞いて、景子の顔が少し明るくなった。
そして部屋に暫しの間、沈黙が流れた。二人共顔を赤くし、時折目線が合わせるが羞恥心ですぐに逸らしてしまう。
そんな均衡を先に破ったのは景子の方だった。
「・・・さ、触らせてやるよ!」
「え?」
「だから、触らせてやるって言ってるんだよ!オレの胸好きなんだろ?ホラッ!」
景子はそういって俺の手を取り、セーターが捲れて丸見え状態だった胸に押し付けて来た。
ムニュゥゥゥ!
掌と指が非常に柔らかい感触に包まれた。
指先が乳肌に沈み込む。生温かく瑞々しい、滑らかな感触が伝わってきた。
(な、何だコレ?滅茶苦茶柔らけぇ!!)
「ふっ、気持ち良いか高也?」
不敵な笑みを浮かべた景子は、もう片方の手で俺の股間を触ってきた。
「おっ!硬くなってる!!オレの身体に興奮してやがるこいつ」
「や、やめろ!」
俺は景子の手を振り解く。
「何考えてんだ!お前?」
「あの、お前が喜ぶと思ってさ・・・それとも嬉しくなかった?」
「いや、こういうのは普通、大人になってからやるもんだろ」
「・・・もう、真面目なんだな、お前・・・エヘヘ、でも嬉しかったよ。オレを・・・その、女として見てくれてて」
先刻までの泣き顔が何処へやら、いつしか景子の顔は満面に変わっていた。
と思うと今度は恥ずかし気な顔に変わっていった。
「・・・話変わるけど、高也は好きな女の子とかいないのか?」
景子の質問の意図に感付き、淡い期待を寄せてしまった。
「いや、いないけど・・・」
「じゃあ!高也は・・・その・・・どういう風な女の子が好きなんだ?」
「・・・えっと、そうだな・・・髪の長い人が良いかな」
俺の好みを聞いた直後、景子は口元に手を当てて神妙な面持ちで何かを考え始めた。
すると少し不安気な表情なり、顔を俯き身体を震わせながら俺に語り掛けて来た。
「も、もしオレが長い髪の似合う女になったら・・・その、オレの事を・・・好きになったりするのか?」
景子の一世一代の告白に、俺は驚愕した。
前々から景子が、俺に気がある事は以前から薄々感付いてはいたが、改めて面と向かって言われると、今までに体験した事がない新鮮な気分になった。
そして、もじもじと恥ずかしそうに身動ぎする景子も、また可愛く思えた。
「・・・・・・・・・うん、なるかもな」
「ほ、本当か?本当なんだな!」
「お、おう」
「約束だぞ?絶対、絶対だからな!!」
「・・・分かった。約束するよ」
その勢いに押されて、景子の問いに手拍子で答えてしまった。
俺の 了承を得た景子は先程までの泣き顔が嘘みたいに消え、いつしか満面の笑みに変わっていた。
「良し!分かった。その変わり髪の毛伸ばす時間、ちょっと頂戴」
「・・・うん、良いよ」
その言葉を聞いた景子は毛先を弄りながら嬉しそうに微笑んでいた。その幸せそうな顔を見ていて、こっちまで嬉しくなってきた。
「他にないのか?こういう女になって欲しいとか、そういうのないのか?」
「うぅん、そうだな・・・スカートとか女の子っぽい格好してほしいかな・・・後、言葉遣いも出来ればもう少しお淑やかな方が良いかな」
「分かった!努力してみる!」
この時景子は、俺好みの女になるべく確固たる決意を固めた模様。
「もし、これで約束破ったら兄貴達に言い付けて、ボッコボコにしてもらうから!」
妹を溺愛する屈強な二人の兄を思い出し、一瞬血の気が引く。
「質の悪い冗談はよせよ!」
「本気だよ!だって、冗談であんな事・・・お前好みの女になるなんて、言ったりしないもん」
上目遣いで、恥ずかしそうにチラチラと俺を見てくる景子がまたしても魅力的に見えた。

そして景子は髪を伸ばし始めた。俺の要望通り口調や服装も少しずつ女の子らしくなっていき、次第にその変化に周囲の人も気付き始めた。始めてスカートを穿いて登校した際、クラス中がどよめいたのを覚えている。
同級生からその事を指摘された際、景子も流石に恥ずかしかった様で。
「中学デビューの為」
といい納得させていた。
その間も景子の身体の成長はとどまる所を知らず、約束をして間もなく本当にDカップになった模様で、5年生にして大人向けの本格的なブラジャーを着ける様になった。
6年生になった頃には胸がEカップにまで膨らみ、持ち前のスレンダーな体型も相まってグラビアに匹敵する程に成長していた。
胸だけでなく顔にも変化が生じ始め、以前まではどこか少年染みた中性的な作りだったが、徐々に色っぽい大人の女の顔になっていった。
卒業直前には身長も170㎝近くまで伸び、同級生の女子とかけ離れた大人びた容姿になっていた。

月日は流れ俺は小学校の卒業式を迎えた。
式が終わると学ラン姿のまま、約5年間見続けた校舎を、体育館裏から景色を眺めていた。
(来月から地元の3つの小学校が集結する中学校に通うのか)
そんな事を考えていたら不意に背後から声が聞こえた。
「高也、ここにいたんだ?」
「あ、景子!」
後ろを振り返るとそこには、俺と同じ中学校の黒いセーラー服を着た景子の姿があった。
2年近く伸ばした癖のない艶やかな髪を両肩に下ろしウエストにまで達していた。そして、成長した巨乳が制服の上からでも分かる位にくっきりと浮き出ていた。
「捜したよ、高也」
「悪い景子!それで要件は?」
「うん・・・要件は、その・・・約束の件だけど・・・覚えてるよね?」
「ああ、綺麗になったな。景子」
「?」
俺の言葉に反応し、景子は顔を紅潮させて俯いてしまった。
「・・・・・・それで、どうなの?オ・・・私と付き合ってくれるの?」
顔を赤くした景子は、羞恥心と不安が入り交じりながらも告白して来た。
俺の為にここまで健気に尽くしてくれた女の子を、これ以上辱める訳にはいかなかった。
「・・・良いよ。付き合おうか」
「ほ、本当?」
「ああ、本当だよ」
「グスン、うえっ・・・ひっく・・・えっぐ」
返事を聞いた直後、景子の目から大粒の涙が溢れ出て、その場で泣き崩れてしまった。
「どうした景子!大丈夫か?」
「ううっだって・・・もしかしたら振られるんじゃないかって思って・・・そう考えると居ても立っても居られなくって・・・グスン・・・でも私、高也の事好きだから・・・昔から、初めて会った頃からずっと、ずっと好きだったから・・・それがやっと実って、嬉しくてしょうがないの・・・ヒック」
止め処なく溢れ出る涙を手で拭いながら、自分の心に秘めた想いをぶつけきた。
景子がここまで俺の事を想っていてくれた事が嬉しくて堪んなかった。
「景子、はい」
「グスン・・・うん」
そんな景子が急激に愛おしく想え、彼女に手を差し伸べて立ち上げる。
俺は景子の両肩に手を置き、顔を向かい合わせにする。
お互いに潤んだ瞳で見つめ合う。口を窄めて寄せ合い、唇が重なり合った。
景子の唇から甘い香りが流れ込み、俺の口の中で変化を起こし、新しい味になっていた。
どれほどの時間がだったか覚えていないが、暫くして何方ともなく唇を離して、再び見つめ合った。
「・・・高也に、ファーストキス・・・あげちゃった!」
「お、俺だって初めてだよ!」
フフッと互いの口から笑みが零れる。
俺は景子の腰に手を回して抱きしめ、彼女の顔が俺の胸に凭れ掛かる形になる。
景子もそれに応える形で抱きしめ返して来た。
「これから、よろしくな景子!」
「ええ、こちらこそ!」
こうしてこの日から、俺と景子は恋人同士になった。
小学生編終わり